マンションの受水槽に異常が生じる原因は?

水が出ない?受水槽が空っぽ?水が溢れている?

どうしたらいいの?・・・という方はご一読ください!

マンションの給水システム

まずお住まいの集合住宅やマンションの給水設備について確認しましょう。通常マンションのような戸数の多い建物には独自の給水システムを設置しています。

なぜでしょうか?

その理由はこちらを参照ください➡➡給水システム 簡単に言えば水道管からマンション全体のお部屋に直接繋ぐことができないからです。そのためマンションなどの集合住宅は大抵「給水ポンプ」を使って各部屋に配水しています。そのためある一定の量の水が一度に沢山の世帯に供給される必要があります。

水道管からの配水量では数十または数百の集合住宅各戸に給水することが困難になります。そのため水を一旦溜めてそれを給水ポンプで各部屋に給水させる仕組みになっています。

その水を確保するために「受水槽」というタンクが設置されています。

このような受水槽(貯水槽)がよく見られます。

この容器は「FRP」と呼ばれる繊維強化プラスチックでできています。この素材はガラス繊維に不飽和ポリエステル樹脂を含侵させたものですが、強度が強く、温度や圧力にも変化の少ない素材となります。ユニットバスのお風呂場の浴槽などにも使われています。

どのように受水槽に水が溜められているのでしょうか?

主に2つの制御部品が関係しています。

まずマンションのような集合住宅では戸建てのような給水管呼び径(13mm/20mm)では賄いきれないため大口径の配管で給水されています。大きいものでも引き込み管口径は40mm50mmです。その給水管から水がメーターを抜けて受水槽まで送水されてきます。

制御部品その1


 

受水槽の中の水が減っていくと注水の指令を出す「ボールタップ」の浮きが下がり水が注水されていきます。これはよくトイレの中のタンクにある仕組みと同じです。丸い浮き玉の浮力で給水弁を開閉させて水を出し止めしています。

このボールタップには「単式」と「複式」があります。単式とはトイレのロータンク内にあるボールタップと同じ仕組みで、シンプルで浮き玉の浮力で1つのレバーシャフトの動きのみで止水させるタイプのことです。複式とは2つ支点で浮き玉の浮力を受け止めて止水させる方式です。

制御部品その2


 

それから後程解説しますが、注水された水がある程度の容量に達すると水を止める仕組みになっています。この水の制御を行っているのが「定水位弁通称FMバルブ)」と呼ばれるものです。

この定水位弁には2つの型があります。1つは「ストレート型」です。1次側から2次側に送水する経路が横まっすぐになっています。もう1つが「アングル型」です。(上記写真)送水管からの水が90度下に曲げられて入る形になります。下の写真にある箱型の部分がそうですが、これは「アングル型」になります。

右上の箱のようなものがありますが、この中に定水位弁があり、水槽内のボールタップと連携して水を出したり止めたりしています。(トイレのロータンクにあるものと同じ原理の物)ポンプが受水槽内の水を吸い上げつづけると徐々に水位が減っていきます。

原理はトイレタンクの方式と同じ

それに伴い徐々にボールタップの浮き球が下がり一定の水位まで下がるとボールタップのパイロット管の水が流れ出て定水位弁が開く仕組みになっています。

それによって一気に受水槽内に水が吐出されます。徐々に溜まっていき水位が上がりボールタップの浮き球が浮力で上がっていくとパイロット管内の水の流出が止まり次第に水が溜まっていきましす。その水圧が定水位弁に届くと給水弁が閉じて止水します。

中にはこの定水位弁(FMバルブ)が電磁弁になっているものもあります。つまり電気制御で給水弁が開閉する仕組みです。電磁弁はストレート型になっています。

受水槽のトラブルで何が起こるのか?

まず多いのがボールタップか定水位弁の故障による「水位警報」です。

受水槽(高架水槽)の水位が満水になったり減水になったりすることがあります

満水(減水)警報」はどうやって発報するのでしょうか?

受水槽には水槽内の水の水位を検知する「電極棒」というものが設置されています。オムロン製がほとんどですがステンレスの棒になっています。全部で4本が水槽内に差し込まれています。長さは以下の順番です。〇の番号が電極棒の長い順です。


OMRON(オムロン) 電極保持器 PS-□SR/-31タイプ PS-5S
 

E5;アース①・E4;減水警報②・E3;警報停止③・E2;満水警報④

電極棒」から微量な電流が流れていて水で通電しています。この電極棒からの信号を感知しているのがポンプの制御盤の中にある「フロートレスユニット」と呼ばれる電気部品です。白い小さな箱のようなものが連なっている部品です。それぞれが警報リレーとなっています。

つまり一番短い電極棒の先端にまで水位が上昇してしまうと電気が流れ、通電します。その通電した信号をリレーユニットで感知して満水警報を発報させます。受水槽に水がどんどん入り続けているために満水になってしまうのです。原因についてはこの後取り上げます。

警報事例その1;減水警報

まず「ボールタップ」が何らかの理由で固着して動かなくなると水が受水槽に注水されません。あるいはボールタップパイロット管が詰まってしまって水が十分に抜けないと定水位弁が開きません。それが原因で受水槽に水が入ってこなくなります。

受水槽と給水ポンプとには直接的に連動性がないため、ポンプが通常通り受水槽の水を吸い込み続けて各部屋に水を供給していき、徐々に水位が減っていきます。もしそのまま水が減って行けば受水槽内が空になってしまいます。そうなるとポンプが空転してモーターが焼けてしまう危険があります。

それを防ぐため2番目に長い電極棒が水から出てしまう(先端が露出してしまう)と通電が切れます。つまりある水位まで減ってしまうと通電しなくなったことをリレーユニットが感知して「減水警報」が発報します。

この場合、減水警報が出た場合のみ給水ポンプは空転防止機能が働き、給水停止状態になります。ポンプ機器の保護につながりますがその結果は断水になります

警報その2;満水警報

満水警報が発報してしまう原因として3つ挙げられます。

1つ目は「定水位弁」の故障です。

また「定水位弁」が何らかの理由で弁体が閉まらなくなると、水が際限無く受水槽に入り続けます。定水位まで来るとボールタップの浮き球が上がり、本来なら注水がストップするはずですが、定水位弁が故障すると止まりません。

どんどん水を入れ続けますので、受水槽内が水で一杯になります。限界点を超えると「満水警報」が発報します。この満水警報が出てもポンプは止まりません。つまり断水にはなりません。

2つ目は「ボールタップ」の故障です。

受水槽に注水され水位が増してきてボールタップの浮き球が上がって水が止まり、ボールタップのパイロット管の水圧が高まると定水位弁が給水弁を閉めます。ところがいつまで経ってもボールタップの水が出続けてしまうと定水位弁も給水を止めません。そのため水が出続けてしまい満水になります。

3つ目は「電気制御部品」の故障です。

上記の2つの場合は、定期的に「給水設備保守点検」が行われている場合、早期発見が可能ですが、その日程の隙間で起きてしまう場合もあります。

万一警報が鳴った場合は保守点検業者に至急出動していただいて修理または部品の交換をしていただくのがベストです。ただし、上記2つの原因では無く、警報が鳴ってしまうケースがあります。

それは「フロートレスユニット」の故障が考えられます。

受水槽内は適量の水が保たれているのであれば、電気制御部品の故障と睨んで良いでしょう。電気制御部品(ユニットごと)をそっくり交換する必要も起こり得ますし、満水・減水の「フロートレスリレー」(それぞれ単体での交換が可能)だけが故障して警報だけを出していることもあります。その場合は個々の警報リレーを交換すれば直ってしまう場合もあります。

日頃の保守点検が大切

こうした設備不良による受水槽の異常は、定期的な保守メンテナンスによって未然に防ぐことができます。専門の業者によって制御部品に前兆がないか点検してもらうことが大切です。

もちろん急に発症してしまうこともありますが、大抵は予兆になる不具合や不動作が見られることが多いようです。事前の手を打っておけば水が使えなくなったりする緊急事態を避けることができます。

マンションの場合は管理会社によって設備業者による保守点検を行っているところがほとんです。万一の際はその業者が対応することになっています。

受水槽はマンションや集合住宅にとって大切な水の供給源です。

決まった業者がいない場合、日頃整備や点検を取り決めて適正に行われるように見届けてください。管理組合があればこの点をきちんと理事会で話し合いって取り決めておくことは大切です。保守点検修繕工事にも当然費用がかかります。

マンションの管理費から捻出されるかと思いますが、緊急事態になれば費用がかさみます。緊急出動費・緊急工事費など通常よりも割り増しになる可能性もあります。大切なマンション居住者皆さんの大切な費用ですので無駄に使わないためにも重要ですね。

受水槽のトラブルの際には参考にしてください!

更新日:2021年5月24日