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停電になるとなぜ水が出なくなるの?

停電で断水してしまうのはなぜ?

このところの台風や地震などの自然災害によって思わぬ事態に直面してしまうことがあります。中でも停電や断水と言ったライフラインの寸断は日常生活に大きな悪影響を及ぼします。特に猛暑になる時期や冬の寒冷期などに起きてしまうと生命の危機すら感じてしまうのではないでしょうか?

特に水が使えないことはとても不便なことです。

停電が起こるとそうなってしまう住宅があります。それはマンションなどの集合住宅の場合です。

 

なぜなのでしょうか?

それは主に給水をブースターポンプによって配水させているからです。つまり電気を動力として運転している給水ポンプは、電気の供給が無ければ稼働しません。そもそも何でマンションなどは給水ポンプでの供給方法なのでしょうか?(こちらも参照➡マンションの水道水の仕組み

 

 

何十または何百世帯が1つの建物で構成されているマンションでは各部屋に水道管を引き込むことができません。一般的に水道管の直結配管が可能なのは戸建ての場合3階建てまでです。つまりたくさんの部屋が集合したマンションなどでは各水道設備にまでは給水ができません。

 

 

そこで「受水槽」と呼ばれる貯水タンクを設けて、水を溜め、給水ポンプで配水させることで賄うことができるようになっています。ポンプの大きさによって配水量が決まっています。

世帯数によって異なりますが通常は2~3Kw出力のポンプで2台交互運転させるユニット式になっていますが、大型マンションなどでは4台設置して使用量が多い場合は2基同時運転させることもあります。

 

つまり、電力によって給水が成り立っているため停電が起きると断水になってしまうのです

即断水にならないマンションとは?

停電になると即断水になるマンションもあれば、しばらくは給水されるマンションもあります。

その違いはなんでしょうか?

高架水槽式の揚水ポンプを使っているマンションです。「停電=断水」というマンションは給水加圧式ポンプ式となっています。つまり常に給水管に圧力をかけて各部屋での使用に合わせて水圧や水量が減ればポンプを起動させて水圧を保たせる仕組みです。

つまり使用している間は常にポンプが稼働していることになります。それで電気が止まればたちまち動かなくなり、給水がストップしてしまうのです。

 

 

ところが、この揚水ポンプはマンション屋上に設置された高架水槽に水をポンプアップさせ、そこに溜めてから重力の法則で階下の部屋に供給するというシステムになっています。つまり一度揚水ポンプで高架水槽に水が溜められていた場合は、その水が枯渇するまでは供給され続けることが出来るのです。

ただし!条件があります

必ずそうなるとは限りません。上記のことは高架水槽に水が十分溜められた場合の話です。高架水槽方式はその中の水量が目減りしていき、ある程度まで減らないとポンプが動きません。

高架水槽に水を溜めるには揚水ポンプが起動していなくてはなりませんから、高架水槽の水量が減った状態で停電となれば、残っているわずかな溜め水しか使えなくなります。それが無くなれば断水となります。

排水も電力で行っている場合

あるマンションでは生活排水を直接下水管につなぐことができず、排水槽を設けて排水ポンプで汲み上げてから下水に排水させているところも多々あります。特に汚水槽などが設置されている場合は停電が起きると排水槽から排水させる機能がストップしてしまいます。


工進(KOSHIN) 汚水用 水中ポンプ ポンスター PX-650 [60Hz]
 

つまり汚水槽に溜まり始めると最悪の場合、満水状態になってしまい外部に溢れてしまう危険があります。マンションの設備を確認して排水設備がある場合、停電時はなるべく排水を避けることも大切です。もちろん水も使えないためすぐに溢れるような事態にはならないと思われますが、注意は必要かもしれません。

機械式駐車場のあるマンションにお住まいの方はこちらも参照ください➡マンションの立体駐車場の浸水にご注意を

 

ここまででマンションや集合住宅で停電による断水の理由をご説明しましたが、戸建ての住宅でも断水してしまうところもあります。

それはどんな場合でしょうか?

戸建てでホームポンプをご使用の場合


 

3階以上の戸建て住宅の場合、水圧低下を防ぐためにホーム用のポンプ(100V用)の設置を勧められて取り付けられている住宅も少なくありません。この場合も停電よって電力が止まれば、運転できなくなるため断水してしまいます。

 

 

ただし、小さめの貯水タンクがあるので水がどうして使いたい場合はそのタンクから水を取り出して使うことは可能です。タンクの下側に排水ドレン(貯水槽の水を抜くためのバルブ)と呼ばれるバルブがありますので開栓すると貯水槽の水が出てきます。ポリタンク等に溜めて緊急用の水としてお使いください。

一般の戸建ての住宅街(エリア全体)で断水してしまうのはなぜ?

マンションのように電力によって給水が行われていない、一般の住宅地においても断水がおきてしまうのはなでしょうか?

それは水を配水させる「浄水場」や「ポンプ場」も電力で支えられているからです。

 

 

以前のブログにも水源から蛇口までの経路について取り上げました。(こちらも参照➡水はどこから来るのか?)各戸に水が供給されるまでに浄水場で水を浄化してポンプ場で水を配水します。これらの設備はすべて電気が無ければ稼働しません。

ただし、各浄水場には緊急用に「自家発電」機能が備わっています。それによって全くの停止状態を避けるようにしています。

しかし、「自家発電」での電力の出力では完全にフル稼働できません。ある程度抑えられた電力での運転となります。そのため水をたくさん使えば使うほど供給量が追い付かず、一般住宅への配水も滞ってしまうのです。

停電は生活をたちまち成り立たなくしてしまうものです。

 

 

もしものために水は確保しておきましょう。(こちらも参照➡災害ーもしもの時の水は確保していますか?)普段は水を当たり前にように使っていますが、いかに大切な物かを痛感してしまいます。水を大切にしていきましょう。

この度の台風や水害による停電で苦しんでいる被災者の皆さまに一刻も早い復旧をお祈りいたします。

更新日:2020年12月14日