マンションやビルの給水設備
マンションや高層ビルなどでは各階や各部屋への給水方式として給水ポンプ設備を使っています。
この給水ポンプは強力な揚水力を使い、集合住宅などの各部屋に給水を行うことができるシステムです。以前のブログではこのポンプユニットの2つのシステムについて取り上げました。
(*詳しくはこちらをどうぞ➡マンションの水道水の仕組み 水が出なくなった!何が原因なの?マンションの場合)
つまりこのポンプ設備に不具合が生じると運転が停止したちまち断水が生じてしまうのです。以前の記事では受水槽のトラブルについて取り上げています。
こちらもご覧ください➡マンションの受水槽に異常が生じる原因は? 今回は給水ポンプを起動させる電気制御の故障について取り上げてみたいと思います。
今ではインバータ式の給水ポンプが主流
現代では集合マンションなどの給水設備としてインバータなどの制御システムが主流となっていて以前のような制御方式ではなくなっています。ただ依然として古い制御システムで給水ポンプが使われているマンション等も多く、このブログではそうした制御方式にあたる場合に参考にしていただければと思います。
制御盤内の電気部品の故障
すでに「ポンプ故障」の異常警報が鳴っているかもしれません。
制御盤を見るといろいろな電気部品があります。何がどう関係しているのか解説していきたいと思います。特にポンプが停止してしまう原因として点検ポイントを取り上げます。ポンプが止まっていたらこの制御盤を開けてまず確認してください。
次の項目から順番に点検してみましょう!
1、主電源ブレーカーと子ブレーカーの漏電遮断器が落ちている
大抵は黒い大きなスイッチが制御盤の上部にあります。
これがブレーカーです。電圧の要領で大きさが異なります。一般の給水ポンプ用ですと3相交流電源になっていることがほとんどです。大きな電圧の過負荷が起きて漏電遮断器が落ちてしまっているかもしれません。
特に給水ポンプの絶縁が落ちている場合、漏電してしまうことが起こり得ます。絶縁抵抗を測るメガテスターで定期的に測定していることが大切です。その点検で絶縁不良が起きていないかチェックできるかもしれません。
この作業は管理者かまたは許可された人が行なってください!
リセットしてみましょう。リセットボタンを押してからブレーカースイッチを上げてみてください。すぐに落ちなければOKです。時折「落雷」などで落ちてしまうこともあります。スイッチ以外のところには触れないでください!感電する危険があります。
※ブレーカーのスイッチを上げてもすぐに落ちる場合はまだどこかで漏電している可能性があります。
2、マグネットスイッチの故障あるいはサーマルトリップしている
ポンプに動力を送る電圧をマグネットスイッチが起動・停止をつかさどっています。このマグネットスイッチの接点が溶着して破損してしまうことがあります。この劣化は経年によって起きてしまう現象です。接点が破損すると電気が流れないため作動停止になります。
そのため定期的にマグネットスイッチの接点が摩耗していないかチェックしていなければなりません。接点が欠損していた場合は同じ型のマグネットスイッチを交換しなければなりません。
このマグネットスイッチの交換には時間がかかります。基盤内の品番と同じ物でなければならないためです。ポンプ屋さんなら在庫しているかと思いますが予めご了承くださいませ。
サーマルトリップ
またポンプを動かすモーターの絶縁が落ちて過電流が流れていくとモーターのコイルを焼いてしまうことを守るための安全装置でもある「サーマル」が働きマグネットスイッチへの電力をストップさせます。
マグネットスイッチのすぐ下に取り付けられています。このサーマルにもリセットボタンがあります。一過性のものであればサーマルトリップのリセットボタンを押せば元に戻ります。
3、フロートレスユニットの故障
制御盤の中に白い小さな四角い箱のようなものが固まっているユニットが見えます。これがフロートレスユニットです。これは簡単に言えば受水槽や高架タンクの水位を検知するリレー(電気信号回路)です。
特に揚水ポンプなどは、水槽の水の水位(水量)がある程度まで減ると電気信号を送りポンプを起動させる仕組みになっています。加圧ポンプにも同じリレーが使われています。
加圧ポンプの場合、受水槽の水位に異常が起きて水が空っぽに近くなればフロートレスユニットが働きポンプを停止させます。これによりポンプの空転による焼け付きを防ぐことができます。
白い長方形の小さな箱のようなものがフロートレスユニット
このフロートレスユニットのリレーが誤作動を起こすことがあり、それによりポンプが止まり断水となってしまうことがあります。その場合はフロートレスユニットの交換が必要となってきます。
そのすぐ隣りにスケルトンな四角い箱が見えます。これは「交互リレー」と呼ばれ、2台ポンプの運転を均等に交互に動かすための電気部品となっています。上の写真はOMRON(オムロン) 交互運転リレー 61F-AN/-APN2タイプ 61F-AN(AC200V)になります。
この交互リレーが故障すると同じポンプだけが動くようになったり、交互に激しく運転が切り替わる「チャタリング」という不良動作が起こります。点検時に故障していればこの部品も交換しましょう。
電気制御部品はどうやって交換できるのか?
上に挙げた電気制御部品はすべて何本にも及ぶ電気操作配線によって制御されています。それぞれ決められた端子に接続しなければ正しく機能しなくなります。それで部材の調達をはじめ部品の交換には技術のある業者の方にしてもらった方が賢明です。
大抵のマンションでは管理会社が管理していますので、専属の業者が対応してもらえるはずです。緊急センターなどの連絡先に通報して緊急出動してもらいましょう。
自分で何とかしようと下手に配線を外して交換しようとすると動かなくなることも起こり得ます。不安に思う方はぜひポンプを取り扱うことのできる専門業者を手配なさってください。
更新日:2021年5月24日